講演会、行事、イベント成果報告Event Report

第4回 建設用ロボット技術セミナー 開催報告

災害事故小委員会

名称

第4回建設用ロボット技術セミナー

日時

令和5年3月29日(水)14:00~15:20

会場

オンライン開催(ZOOM上でのオンライン開催)

参加者数

申込者数171名、実視聴者133名

テーマ1

建設機械の開発
–環境対応建機およびムーンショット型研究開発事業での取り組み-

講演者

東北大学大学院 環境科学研究科 教授 高橋弘様

発表概要

豪雨災害の被災地における復旧作業には重機の活用が欠かせない。しかし,二次災害の危険性がある場合は,オペレータが重機を操作するのではなく,重機の無人化・ロボット化が必要になる。被災地は軟弱地盤になることが多いため,建設ロボットの安全性を確保するには,ロボット自らが作業中に地盤強度を推定し,走行の可否を判断する能力が求められる。本研究室では,屋内模型試験および屋外実機試験を実施し,バケットおよびブレードによる掘削抵抗力を計測している。本講演では,掘削抵抗力から地盤強度(コーン指数)を推定する手法について紹介する。

テーマ2

油圧所別の基礎知識,最新技術動向

講演者

キャタピラー 販売促進部 中・大型製品担当部長 山本茂太様

発表概要

日本国内で普及台数が最も大きい建設機械である油圧ショベルの用途や基本的な機構,技術動向について紹介する。特に最近は情報化施工に対応した機器の標準装備化,操作機構の電子制御化が進んでいる。これらによって,油圧ショベルの部分的な作業の半自動化が達成されており,安全性や生産性の向上が図られている。

デモンストレーション

日本キャタピラー
D-Tech Centerから遠隔操作デモンストレーション

質疑応答

Q1:高橋先生,環境対応の建機のお話し,凄く勉強になりました。防災の観点からコメントを一つお願いできないでしょうか?

A1:現場の地盤からバケット等に作用する反力の範囲を事前に把握しておき,掘削中に計測した反力が把握していた値の範囲から外れると,より注意し,事故を防ぐことにつなげることができます。

Q2:パドル式は一般的であるが,最も効率的な方式なのでしょうか?

A2:混合の仕方はいろいろありますが,粘土のような土でも簡単にきれ,土塊をきるにも適していると考えています。

Q3:掘削の実験で,側壁の影響をどのように考慮されたのでしょうか?

A3:室内実験,フィールド実験ともに,枠をつくって,均一になるように地盤を作りました。また,バケットの幅の3倍の土層を作りました。この場合,掘削の時の破壊面が側面に影響を及ぼさないことは,シミュレーションや経験則で把握しています。

Q4:波形だけでなく,画像の組み合わせ,他の計測方法を組み合わせて,コーン指数の評価を行うことは考えられているのでしょうか?

A4:波形だけでコーン指数を推定することは厳しいと考えられます。破壊形態にコーン指数が関係することが分かりました。このため,バケットの動きと破壊形態を画像で撮影し,AIで破壊形態を判別し,掘削データ,反力データを用いて,コーン指数を推定したいと考えています。

Q5:建機は日本向けとして何が違いや工夫された点はありますでしょうか?

A5:本日,ご紹介した油圧ショベルの機工は日本向けというわけではなく,グローバルに展開できるものです。ただ,使い勝手や,セミオートの部分で機械の反応,速度が日本国内のお客様から求められるので,それを反映した油圧ショベルを開発しました。

Q6:海外での利用事例は,どのようなものがありますでしょうか?

A6:コマンドステーションは北米でいくつか採用されています。残土の埋戻しの現場等で用いられており,一定の場所で長い期間使用する場合,用いられています。日本の場合は災害復旧工事で広く用いられていますが,海外では日本ほど災害復旧工事が多いわけではないので,これからの広がっていく市場です。

Q7:山本先生,油圧ショベルのお話し。目から鱗です。地球の裏側にあるショベルカーの位置情報を入手できると伺いました。ホントでしょうか?

A7:稼働状況を細かく取得することは難しいですが,携帯電話,衛星電話経由で所在地を取得することはできます。

Q8:デモンストレーション,お見事でした。やはり百聞は一見にしかず,ですね。2台以上の建機が協調して安全に作業を行う事は可能なのでしょうか?

A8:1人のオペレータが2台以上の建機を操作した事例はありませんが,1人のオペレータが1台の建機を操作して,10数台の建機が協調して安全に作業したという実績があります。

Q9:新しい技術が急速に進んでいますが,今回の技術では,何かキーになるテクノロジーはありますでしょうか。

A9-1:電子制御を行えるバルブが市場に広く出回ってきており,建設機械に用いても故障することもなくなってきたことなどが建設機械の高度化に貢献したかと考えられます。

A9-2:現地にスターリンクを配置して,今回のzoom配信をしていました。 20Mbps上りで通信速度が出ていて,リアルタイムの配信にも対応できます。建設ロボットもこういった技術を用いて発展していくと考えられます。

Q10:遠隔操作のタイムラグはどのくらいあるのでしょうか?その差による安全性はどの程度担保されるのでしょうか?

A10:秩父ではタイムラグがほとんどありません。通信距離,通信経路によってタイムラグが生じる可能性があります。安全性,掘削精度を求める場合,タイムラグを少なくしていく必要があります。

聴講者からの感想

  1. 1 タイムラグのお話し,将来,月や火星の土木工事がメインになるので,懸案にあってきますね。お疲れさまでした,楽しかったです。