講演会、行事、イベント成果報告Event Report

第3回 建設用ロボット技術セミナー 開催報告

災害事故小委員会

名称

第3回建設用ロボット技術セミナー

日時

令和5年2月21日(火)13:30~14:50

会場

オンライン開催(ZOOM上でのオンライン開催)

参加者数

申込者数170名、実視聴者118名

テーマ1

自律分散型ロボットシステム ~群協働における自己組織と適応~

講演者

東京大学大学院 工学系研究科精密工学専攻 教授 浅間一様

発表概要

災害対応ロボットなど,無限定環境で適応的に動作できるロボット技術の開発が期待されている.適応性を実現する戦略として,自律分散的なアプローチが有効である.多数の自律的な要素が協調的に動作することにより,多様で適応的なシステム機能が実現される.本講演では,これまでに行われてきた自律分散型ロボットや創発システム,空間知能化などの様々な研究や開発された技術について解説する.特に協調的に動作可能な非常に多数の要素(個)から構成されるスウォームロボットシステムについて述べるとともに,ムーンショットプロジェクト目標3において,現在開発を行っている動的協働や自己組織の概念と開発中の技術について紹介する.

テーマ2

油圧ショベル 自動システム 西村弘平様

講演者

株式会社DeepX 自動化事業本部 重機自動化事業部

発表概要

日本の建設産業は人手不足と業務効率化の遅れが顕著である。一方で、センサや計算機の性能向上や、機械学習などの計算機科学の技術発展により、ロボットの高度化が進められてきた。本セミナーでは、油圧ショベルの自動化の取り組み、特にシステム構成と使用技術について紹介する。

質疑応答

Q1:土木に関する事になりますが、油圧ショベル以外の工事用機械全ての自動化も必要だと思います。そのような取り組みはまだでしょうか?

A1-1:油圧ショベルだけではなく,ダンプトラックの自動化や,ブルドーザーの自動化をはじめ,全体的に実施していく必要があります。

A1-2:油圧ショベルに限らず進めていくべきです。

Q2:建築機械の未来のお話、有難うございます。で、質問です。今の技術レベルは、ベテラン技術者の経験と勘に勝てそうでしょうか?

A2-1:経験と勘に勝つのは,内容によるが,難しいと考えられます。一方で,そこに対して自動化が進んだときは,別のやり方をすることで効率化が図れると可能性があります。例えば,現状,油圧ショベルは一人のオペレータが動かすことを想定しているが,アームが2本ついたものが出てくる可能性があるのではないかと考えられます。

A2-2:経験的な作業であれば,人はミスが出てくるが,機械はミスなくできるので,メリットもあります。しかし,ベテランはいろんな状況に対応に長けているので,AIは対応することに課題もあります。

Q3:自律分散型のアーキテクチャでは上位システムは限定的関与(整合性や管理。同期など)としても無いほうが良いのでしょうか。

A3-1:上位システムに依存しなくても,目的を達成すべく動作させるにはどうしたらよいか,というのが自律分散の研究ということになります。現実的には,オペレータのヒューマンインタフェース(HI/F)が上位システムのような形で必要になってくると考えられますが,HI/Fからすべてのロボットに対していちいちコマンドを送らなくても,ロボット群がある程度勝手に動いて作業を行ってくれる,といのがゴールになると思われます。

A3-2:完全に自動化が導入される前に,部分的な連携,指示だしが今後発生していくであろうと考えられます。

Q4:自律分散型おいては、既にどこかの現場や工場とかで導入されていますか?

A4:既に導入されている。日立はプラント制御にいれています。

Q5:管制・施工指示と自律の境界面を適切に取り扱う手法についても取組むことがよいと思われました。

A5-1:要求は人から出す必要があります。例えば,進捗管理,納期の変動の指示,人間がやるべきところとして残すべきです。

A5-2:ルールを決める等の議論を進めていくべきです。

Q6:油圧ショベルの試験で監視者を配置し、停止の判断をさせていたが、その判断は油圧ショベルの運転経験が無いと、適切な判断が難しいと思われる。最終的にはこの判断も、システムが行うようにしていくのか?自律分散システムのように役割分担となっていくのか?

A6-1:現状難しいです。まず現場および重機の安全確保を行う専任の監視委員が必要です。その方は運転経験を持っている必要はなく実際の挙動を持って非常停止し、さらに運転経験がある方も追加で安全監視する体制が望ましいと考えます。

A6-2:ドローンも規制が強い状況(第三者の上を飛ばしてはいけない,常に目視で監視)から,信頼性が高くなると,規制が緩和されています。自律分散でも,信頼性,安定性など,問題がないかを常に確認しながら,動作させています。

Q7:手動操作と自動操作で効率の違いは現時点であるでしょうか。また、自動化の効率を高めるための課題は何でしょうか。

A7-1:理想的な環境では動作すると考えられるが,想定外の環境では課題があります。ソフトウェア,ハードウェアのリースは進んでいるが,オペレータと比べると足元にも及びません。まずは,定型的な作業で動かすことが解決策の一つです。

A7-2:シナリオを通りに物事が進んでいるときは自動化で問題ない。課題は想定外のことが発生した場合の対応であり,時間がかかると考えられる。

聴講者からの感想

  1. 大変興味深いご発表でした。実機での応用はまだいろいろなハードルがあると思いますが,実機で動くところは是非見てみたいです。ショベルカーのバケットの姿勢制御は,シンセシスでもよいのかもしれないと思いました。バケットの姿勢や位置のピックアップは難しいでしょうか?
  2. 大変興味深いご発表でした。実機での応用はまだいろいろなハードルがあると思いますが,実機で動くところは是非見てみたいです。ショベルカーのバケットの姿勢制御は,シンセシスでもよいのかもしれないと思いました。バケットの姿勢や位置のピックアップは難しいでしょうか?
  3. AIによる自動運転も通信技術を使用した遠隔化操作についても,安全を担保した重機の停止機能の確実性が大事だと思います。そのためにも,重機を操作するコンピュータについてもウイルス対策もお願いします。
  4. A Iロボット技術の最新情報に接する事が出来、有益であった。シュリンクする日本が、どうA Iロボット技術を使って再生していくことを考えるいい機会となった。
  5. 土木工事では土工作業が多いため、今回のような建設現場での自動化システムやロボットシステムは大変有用であり、自動化理論や各装置や機器の役割や仕組み、自動化の研究経緯や背景、自動化掘削機械の現状、現状での課題、将来動向などが学習できて、とても有意義な内容の講義でした。土木学会様や登壇者様、ありがとうございました。
  6. 講演ありがとうございました。現時点での 油圧ショベルの自動化レベルがどのレベルか多少なりとも掴めて有意義でした。
  7. 施工には、経済性、施工性、安全性等の総合的な管理が必要。自動化は限定的な対応となるのではないか。
  8. 自動化には期待しています。同じ条件では、オペレータにはまだまだかなわないようですが、たとえば、半分の能力を持つことができれば、メンテ時期待しています。間を数時間取り、それ以外動き続ければいいので、一人のオペレータよりも一日あたりの成果が大きくなります。講師の皆様のご活躍を。
  9. 興味深い内容のセミナーありがとうございました。表示名の変更に戸惑い、何回も退出をしてしまいました。
  10. 自律分散システムや自己組織化の内容など、たいへん参考になりました。