講演会、行事、イベント成果報告Event Report
第2回 建設用ロボット技術セミナー 開催報告
名称
第2回建設用ロボット技術セミナー
日時
令和3年7月15日(木)13:30~15:20
会場
オンライン開催(ZOOM上でのオンライン開催)
参加者数
申込者数273名、実視聴者206名
テーマ1
誕生から半世紀~水陸両用ブルドーザ
講演者
青木あすなろ建設株式会社 建設技術本部 環境リニューアル事業部 水陸無人化グループ 飯塚尚史様
発表概要
無線遠隔操縦式水陸両用ブルドーザは、浅水域を作業領域とする水陸両用建設機械である。
1969年、富山県常願寺川の応急復旧工事で初めて現場に投入されて以来、河川、海岸工事等で使用され、近年では治水対策としての河道掘削、河川改修工事、あるいは無線遠隔操縦技術を活用した災害復旧工事にも幅広く使用され、先の東日本大震災においても被災地各所で稼働した。
これまでの施工実績は1,200件を超えるが、その活躍はあまり知られていない。
講演では水陸両用ブルドーザ開発の歴史、特徴、施工事例等を報告した。
質疑応答
Q1:水深7mまで可能とのことですが、それ以上深いところで運用する課題は何でしょうか?
A1:以前、大水深対応として吸排気塔を12mまで伸ばしたことがありますが、機体振動によるモーメントや走行安定性で非常に苦労したことがございます。最も効率的かつ経済的な作業水深は、5m程度までと考えます。また、7m以上の場合は、作業船の作業領域となることが多いです。
Q2:重機の位置推定にtotal stationを使っているとのことでした。トータルステーションから出力されるデータを自由に使うことができるソフトウェアインターフェース等も開発されたのでしょうか?それは我々開発者もそのインターフェースを使うことができますでしょうか?また、トータルステーションを使う場合の予測される問題等はございますか?
A2:まずトータルステーションを使用した理由として、GPSだと電源や送受信機を吸排気塔に設置する必要があり、通信途切れや故障等の不具合がございました。その対応としてプリズムだけで良いT/Sの利用を進めております。T/S利用の課題については、プリズムの配置となります。構造上、煙突の最上部にとりつけることが難しいため、煙突の向きや振動でロストすることがございます。ソフトウェアインターフェースを使うことができるかについては、いまはレンタルメーカでマシンガイダンスのソフトが出ていますので、我々もそこから使わせてもらっている状況です。
Q3:水中ブルで河床水平掘削する紹介がありますが、掘削前の形状はどのようにして計測されますか。また、形状計測の課題があれば教えてください。
A3:水中の地形計測については、いまはマルチビームとかで事前にある程度の形状がわかるのですが、土質まではわからない問題がございます。そのためオペレータや職員が実際に水中に入って調査しているのが現状でございます。水陸ブルは43.5t以上ある重量物ですので、トラフィカビリティの確認が重要です。施工の安全性の確保のために必要な作業となっております。
Q4:水陸ブルは、操作に経験が必要と感じました。操作者の基準はあるのでしょうか?
A4:仰るとおり、専属の熟練したオペレータが操作します。操作は、目視で機械の傾きや、負荷を確認し操作しています。基準は特にございませんが、実際の現場でOJTで操作技術を習得しています。
Q5:水陸両用ブルトーザについて、水中作業時にもし故障して、動かなくなった時の対応は、どのようにしていますか?
A5:もし水中で停止した場合は、有線の「ダイバーコントロール」があり、潜水士が手動で操作することが可能です。
最悪、水中でエンジン停止や水没した場合は、もう一台水陸ブルを搬入しけん引するか、起重機船等で引き上げます。
Q6:海底ケーブルの施工がどうだったのか、また教えていただければと思います。
・水底の地盤確認について、人間でない方法は考えられますか。
・ダムで非出水期に水位を下げている条件がありましたが、点検等のタイミングをとらえたとの感じでしょうか。
・GNSS方式の改良は難しいでしょうか。
A6:・音響系のソナーで測深する事が考えられます。
・年間のダム貯水池運用計画で、非出水期に水位を下げる時期に施工しています。
・GNSSの場合、GPSアンテナの他、送受信機や電源(200V→100V)が必要となります。水陸ブルはもともと目視で遠隔操作する機械ですので、ICT施工で必要な機器は後付けとなります。このため、機械内部にそれらの機器を格納することが困難であり、重量物を機械上部に取付けなければならずGNSSは難しいと判断しています。
テーマ2
水中バックホウを対象とした操作支援システム
講演者
国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 港湾空港技術研究所 インフラDX研究領域 サイバー施工研究グループ 平林丈嗣様
発表概要
港湾工事等における水中作業については、基本的に潜水士の手作業に依存しているが、海中透明度の高い沖縄では、潜水士搭乗型の水中バックホウが実用化されている。
近年では情報化施工技術の適応化が進められており、さらなる潜水士作業の肉体的負担の軽減、安全性向上のため、遠隔操作化に対する期待も高まっている。
しかし水中では作業中に発生する濁りにより視覚情報が劣化するため、光学映像だけで遠隔操作することは困難である。
講演では、水中用マシンガイダンス、外界計測ソナー、作業支援アタッチメントを組み合わせた遠隔操作支援システムについて紹介した。
質疑応答
Q1:超音波で形状計測されていますが、泥などが水中に舞うと超音波が反射して計測が難しいと聞いたことがあります。そのようなことはないのでしょうか。そのような状況(泥などの軟弱な河床)で計測の課題があれば教えてください。
A1:濁りの具合や懸濁物質のサイズにもよりますが、距離が遠くなると減衰やノイズが多くなり認識が難しくなると思います。しかし今回のシステムでは、キャビン高さ2.4mくらいの場所に下向きにつけており、マウンド面までの距離が近いため影響はありませんでした。
ただし計測対象が泥の場合、水槽で模型試験を実施したことがありますがうまく測れなかったことがありました。たぶん音を吸収してしまうからだと考えます。現在の水中バックホウの場合、対象が割石なので大きな問題となっておりませんが、例えば河川や砂浜付近での作業を想定した試験が必要だと思います。
Q2:外界計測されていますが、測定の許容値は何センチまでOKでしょうか。
A2:講演での遠隔操作支援システムは施工精度±10cmを目指しております。
そのためプロファイルソナーの許容範囲についは、その±10cmより下回る必要がありますが、対象物の形状によって計測精度が変わりますし、音が返ってこないで欠測してしまう場所もありますので、超音波計測ではだいたいの形状がわかれば良いとしております。正確な高さについては、バックホウのバケット刃先や転圧板を当てて計測する方針としています。
Q3:海洋での地形計測はソナーで計測するにしても、深いところでは難しいと思いますが、現在はどのように計測されていますか。
A3:船から-3000mの海底を図るのは難しいと思いますが、作業機体につけて計測するのであればそこまで大きな問題にはならないかと考えます。たとえばROVなどに搭載するイメージングソナーもございますし、Coda Octopus社のEchoScope等は大水深の海底資源開発でも利用されていると聞いております。
Q4:土木研究所さんで「ローカル5G」を使った「リモート施工」が紹介されていますが、水中の場合は「5G」に比べると通信容量も少なく、速度も遅いと思いますが、操作に支障をきたすことは無いのでしょうか?
A4:水中部における無線通信の場合、音波を使うことが一般的なため、おっしゃる通り速度が遅くなります。しかし水中バックホウの場合、動力ケーブルでモーターに給電しておりますので、そのケーブルに通信線(LANケーブル)を這わせて有線通信を行っております。なので、遅延や通信量などについて、いまのところ支障や問題となっておりません。
テーマ3
よく見えない水中でのROV/水中ドローンの可視化技術
講演者
日本海洋株式会社 営業部 佐藤友亮様
発表概要
従来、港湾工事等における水中作業については、主に潜水士が担っていた。
しかし、少子高齢化による潜水士の減少、高齢化が課題となっており、負担軽減策を講じる必要がある。
負担軽減策としては、省人化・安全性向上を目的としたROVの(水中ドローン)の運用が期待されている。
講演では、近年性能を維持しつつ低廉化したROV(水中ドローン)の紹介に加え、搭載した各種機器により実現した水中作業について案内された。
質疑応答
Q1:水中のROVの操作について訓練は必要でしょうか?
A1:透明度が高く、ただ操作するだけ、ただ見るだけであれば、そんなに難しいものではないと思います。ただし、潮流や点検時に定点保持といった作業状況によっては、練習や経験が必要になるものと思います。また弊社では技能講習を予定しておりますので、実務の前に練習や訓練することも可能と考えます。
Q2:水中測位の精度と測位可能な距離について教えてください。
A2:使用目的によって機材が異なるため、一概とは言えませんが、たとえばKongsbergのμPAPであれば、カタログスペックではオペレーションレンジ4000m、レンジ精度は0.45%ですので100m先で45cmとなっております。しかしながら、実際の海で使用するとカタログスペックの精度を出すのが難しく、特に岸壁近くとか港湾構造物が存在する場合、例えば比較的安価なSeaTrackだとマルチパスで精度が悪くなりまして4~5mくらいの誤差が発生するイメージです。また測位可能な距離についても、シートラックだと使った感じで100mくらい、μPAPだと1kmくらいまでは大丈夫といったように、機器や仕様によってかなり異なります。
Q3:水中可視化技術の可能性に大変興味を持ちました。水中ROVの赤外線可視化センサーを用いた調査について伺います。赤外線センサーでは、何m先くらいまで可視化できるのでしょうか?可視化に際して影響を受ける要因(例えば濁度)には、どのようなものがあるのでしょうか?
A3:赤外線の限界として3mくらい、実質的な可視化の距離として80cmから1.5mくらいが現実的かと考えます。ダムなど淡水域で生じる植物プランクトンの濁りは見えますが、粘性のある濁り(墨汁やインスタントコーヒーはダメでした)は難しいです。
Q4:赤外線カメラの値段を教えてください。
A4:※価格に関する回答につきましては、HPでの掲載を省略いたします。
Q5:マニピュレーターの厚み計は、鋼材表面の付着物に影響されずに厚みの計測が可能なのでしょうか。
A5:錆、コーティングは無視して計測可能です。
Q6:水中ドローンについて、どの程度の流速まで対応可能でしょうか。
A6:今回紹介差し上げたBlueROV2は3knotの航行速度があるため、それ以下の流速であれば対応可能です。モデルによっては4knotの航行速度を誇るものもございます。
Q7:トランスポンダ含む位置特定について、30m程度までで精度が高いことを目指す場合、どのような可能性があり得るでしょうか。
A7:トランスポンダ、USBL方式において精度を高めたい場合は以下が対応可能な機種を検討ください。
1)トランスデューサ(船側)に動揺センサが搭載されており、またその精度が高いこと
2)音速度プロファイルデータを適用可能なこと
3)多重反射などの雑音に強い計測方式を採用していること
聴講者からの感想
- ROVの技術や機械の進歩がすごいなと思いました。
- 大変貴重な映像が拝見できて有意義な時間でありました。次回も楽しみにしております。
- 水中ドローンについて、いいものが実用化できていますね。
- 水中の施工の紹介、皆さん知っていただくいい機会だったと思います。普段目につかない地味な作業なので私どももアピールが必要と痛感しました。これからもよろしくお願いいたします。
- 非常にいい勉強になりました。知識の幅が広がることはとてもいいことだと思いますので、次回も参加したいと思います。
- 建設用ロボット技術の進歩で、施工性や操作性等が大変向上していることがよく理解できました。
- 建設ロボット技術の現在の状況がよく分かりとても興味深かったです。小企業では中々、体験できない技術ですのでとても参考になりました。
- 水中ブルドーザの歴史、水中バックホウの操作支援、ROV水中ドローンの可視化技術について最新の知見が得られた。特に、水中インフラ点検の大きな課題である水の濁り対策に、赤外線カメラによる可視化が実用レベルに達していると感じられた。
- 赤外線があるとROVの操縦がしやすそうに感じました。
- 業務で関わっており、いろいろ聞こうと思っていたことを 先に教えていただいた感じです。今後とも宜しくお願いします。
- 水中建設機械の話が中心で、陸上の無人化施工機械に比べ、周辺の状況を把握しにくいという問題がよくわかりました。いまは、無人化施工の技術を取り入れることを進めておられるようですが、機械の姿勢や周辺状況の把握はまだまだ研究が必要なようです。水中探査技術の分野の技術の導入が必要でしょうが、数メートルの近い範囲の地形等をリアルタイムで詳細に把握することは難しいようです。赤外線カメラが有効という話がありましたが、視界はまだ狭いようです。私ところでは、管理中のダムの堤体の調査に水中ROVの利用を検討していますが、水中構造物の管理は今後の大きな課題と思います。
- ご回答ありがとうございます。 無線にこだわってしまい申し訳ありません。
- 私は道路、河川や下水道で陸上部の設計ですが、今回初めて土木学会建設用ロボット委員会のセミナーを視聴しまして、水中での建設機械が進歩して驚きました。このセミナーが今後の設計に役立てばと思っています。主催者、後援者様ご苦労様でした。
- 平林様、今回はこれまでを総括するお話で、経緯がわかり易かったと思います。今後を語る部分についても、またお話させていただければ、と思います。
- 事務局様、参加者向けに、可能な資料はいただけるでしょうか。
- 海洋土木のICT施工技術について具体的に把握できたので、非常に為になりました。次回の陸バージョンを楽しみにしております。橋梁下部工の洗堀調査等に活用できればと思います。
- 建設業界もロボットの普及時代を感じました。これからは、各方面の現場にも対応したロボットの開発、そして研究活躍されることを期待します。
- 水中ロボットが開発されてから技術開発と現場で使用しながらの改良が進むとともに情報通信技術の発展により更に進化したと実感しています。
- 次回セミナーも参加したいので開催が決まりましたら連絡下さるようお願いたします。
- 業務で水中計測のナローマルチを実施していますが、テーマ2について超音波で形状計測した場合、泥や浮遊砂などで正しく計測が出来ていない状況を経験しておりました。音波での計測では、水質や河床の状況に注意しなければいけないことを改めて認識しました。