講演会、行事、イベント成果報告Event Report

建設用ロボットに関する技術セミナー(第1回)の開催報告

災害事故小委員会

名称

第1回建設用ロボット技術セミナー

日時

令和3年3月17日(水)13:30~15:20

会場

オンライン開催(ZOOM上でのオンライン開催)

参加者数

申込者数334名、実視聴者265名

参加料

無料

テーマ1

フィールドロボット技術とその災害対応やインフラ点検への適用

講演者

芝浦工業大学 客員教授 油田信一様

発表概要

ロボット作業環境の変化(働く範囲の拡大)により工場での産業用ロボットから自然環境でのフィールドロボットや日常生活空間でのサービスロボットというように働く範囲が拡大しています。フィールドロボットについては、近年使える要素技術が大幅に進んできたため、フィールドロボットの実現が手の届くところにきています。
建設分野におけるロボット技術への適用事例として、災害対応へのロボット技術の適用例(無人化施工)として半水中重運搬ロボットの成果紹介と、インフラ設備老朽化への対応についての事例を紹介いただきました。

質疑応答

Q1:現在、多くの企業様が建設ロボットやICTの技術を2023年に導入するという計画が立てられているのですが、実際の普及率はどのくらいまで行っており、完全な導入までの課題などはありますでしょうか?

A1:我々研究者実務者としては、現場でICT技術を生かしたい、進めたいという希望はあり、近年では多くのICT技術が使われてきたと感じています。かたや、普及率が少ないという意見については、大きな期待に対して、まだまだ技術が足りていないとも感じているところです。
たとえば完全なICT技術の導入というのを、「現場から人がいなくなること」と定義すると、課題は山積みになります。たぶん不可能でしょう。
大事なことは、具体的で現実的な課題を具体的に共通理解にして、いろいろな分野の人がアプローチできるようにすることが今後の普及にとって必要なことだと思います。

Q2:インフラ点検の知見から、今後求められる技術や期待される分野について教えてください

A2:様々な分野や対象でインフラ点検技術ができつつありますが、現状でできていることは、求められていることに対して少ないと感じています。人間にできて機械ができないことがまだまだ多くあります。
ただ、昨今の情報技術の進歩が著しいものがあります。これを生かすことが重要と考えます。
たとえば、大量の写真を処理することは人間よりIT技術のほうが得意です。問題を解決するためには、ロボットやICT技術が得意な部分が活きる全体システムを作っていくことが大事と考えています。

Q3:水中の難しさはどんなところがあるのでしょうか?

A3:水中に限らず、「見たいところが見えない」ということが大変な問題であります。
SIPでは1m先見るために電磁波レーダを使いました。それである程度の形状はわかるようになりました。しかし、それでも完璧というわけではありません。これは水中に限らず、いろいろな場面で遭遇する問題と思います。わからないところを知るセンサの開発はきわめて重要な課題と考えます。

テーマ2

ZMPの技術紹介、現場で実践的に活躍するロボットたち

講演者

株式会社ZMP 取締役兼ロボリューション事業部長 西村明浩様

発表概要

株式会社ZMPはロボット・自動運転技術をベースに様々なフィールドで活躍するロボットを手掛けています。本講演では、自動運転の取り組みや、物流施設や工場で活躍する物流ロボット、街の中で移動・配送・警備/消毒といったサービスを提供するロボットについて事例を交えて紹介しました。

質疑応答

Q1:高速道路の、特にトンネル内のような特徴が少ない空間においても、このLiDARによる自動運転はうまく行くのでしょうか。白線検知はカメラで出来ますが、LiDARでの位置情報が定まらなくなるように思います。

A1:おっしゃる通りトンネルの中だと特徴が少ないので、パターン認識がうまくいかない可能性が高いです。トンネルだとIMUの積分により位置を同定するのが一般的ですが、ドリフト誤差が溜まるので、補正は必要になります。案としては、たとえば表示板などを使って、位置をリセットする方法ですとか、自動運転のためのマーキングを設置する方法が考えられます。

Q2:ロボットの動力は内燃機関でない場合は、バッテリーになると思いますが、一度の充電での稼働時間はロボットの大きさや機能にもよると思いますが、どの程度の時間になりますか。一日の稼働時間をカバーするためにバッテリー重量が重たくなり機能が低下することはないのでしょうか。

A2:大きさにより異なりますが、例えば、弊社の台車型ロボットCarriRoは8時間の稼働となります。1台でも一日の業務をやりきれるように8hにしました。ご指摘の通り、今のバッテリー性能では、稼働時間増加のためロボットのバッテリー容量を増やすと重くなり稼働時間が減る、ということはよくあります。夜間充電するという運用で工夫するか、また、ロボットは自動充電ができるものも多いですので、1台のロボットの充電中は他のロボットを動かすことで、全体として、稼働効率を高めるのも良いのではと思います。

Q3:低速域のロボットについて難しさを教えてください。

A3:たしかに自動車にくらべると容易な部分もあるが、より高い精度、より細かい制御が必要になる場面もあります。細かい話ではありますが、低速の場合、微小な変化を認識しないといけない場合があります。高速道路だと白線がしっかりしているし、人が入ってくることもほとんどないですが、逆に歩道だと人がいるのがあたりまえで、回避する問題が出てきます。
確かに高速域より衝突時の危険性は少なくはなりますが、条件によって問題がかわるので、一概に低速だから簡単というわけではないです。

テーマ3

インテリジェント施工システムの研究活動について

講演者

株式会社フジタ 技術センター 千葉拓史様

発表概要

フジタ・東京大学の社会連携講座インテリジェント施工システムでは2016年の講座発足から、災害復旧に迅速かつ的確に対応する施工技術に関する研究開発を行っています。発表では社会連携講座での研究開発について紹介いたしました。
※概要版は添付ファイルを参照ください。

質疑応答

Q1:産学連携活動についてご報告いただきましたところ、このような活動の継続性確保のため、求める官の役割、更には、民(一般市民)へ求めること、もしくは訴えたいことについて、お考えのところお聞かせいただければ幸いです。

A1:連携について、官がどうはいってくるか、分野や技術によって条件が異なるので、ここですぐ回答することは難しいです。ただ、なかなか表に出ることが少ない、こういった連携講座での研究開発の取り組みを広く知っていただく機会をいただき、ありがとうございました。
こういった技術を一般市民へ広めていくことで、逆に社会から求められることもでてくるかもしれません。最終成果にまとめて広げたいと考えています。

Q2:社会連携の難しさ,研究を実務につなげる難しさを教えてください。

A2:共同研究だと、企業側からテーマを出せるが、社会連携だと具体的なテーマが指示できるわけではないです。今回の場合、勉強会のようなミーティングからはじめて、課題の共有をすることから開始しており、その課題に対して大学側から提案してもらいました。その中から実現可能性や具体的なテーマを決めていくプロセスが難しかった。
さらに、一つ一つの技術は基礎研究となります。その成果を実務に生かすのは企業側の役割となるので、大学の成果をうまく現場に結びつける部分が課題となります。

聴講者からの感想

  1. 自身の大学での研究テーマに役立てたいと考えております。
  2. 将来的にはコンクリート構造物の維持管理でもロボット活用できれば良いと思っています。そのためのヒントを沢山いただきました。
  3. 最後のご講演は建設現場の施工に直接関する内容で興味深かったです。現場に即した内容を今後も期待します。
  4. 今後の建設現場へのロボット適用の可能性を大いに感じさせる内容でした。次回のセミナーもぜひ聴講したいと感じました。
  5. コストは安くなるのか?
  6. 感想としては、セミナー構成が良かったと思います。総論、企業での活動、産学の研究テーマといった様にバランスがとれたテーマ設定となっていたと思います。
  7. インテリジェント施工システムの研究活動に非常に期待しております。
  8. 現時点での建設用ロボットの最新情報が得られたことは有意義であった。今後は具体的なニーズに対して、アプローチできるように国土交通省の努力を期待します。
  9. 開発者の視点から見て、ロボットなどの先進技術を早期に成熟させるためにどのような取組みが必要か、引き続き考えていければと思います。次回を楽しみにしております。
  10. 測量技術が同様に自動運転等に導入されて、今後に益々期待します。もしかしたらロボット技術が測量に導入されているのか?
  11. 従前の建設産業は労働集約型であった。しかし、今後の熟練技能者の大量離職の問題や新型ウイルス感染症の「3密回避」により生産性の低下を懸念する。そのため、自動化や省人化に資する技術の開発が重要であり、現在では異業種間や大学と連携しての技術研究が進展している。特に3次元計測と自己位置認識の技術が格であると感じた。
  12. ロボットの進化に驚いています。進化を続け今後の姿に興味が高まります。
  13. また、各種テーマでセミナーを開催していただければと思います。
  14. 維持管理に関するロボットの研究が進み、高精度かつ効率よい維持管理が定着すること
  15. 点検業務でのロボットの普及が進み、危険を伴う法面や渓谷の橋梁などが安全に又正確に点検できるようになればいいと感じました。
  16. 途中からの参加となってしまいましたがとても勉強になりました。後ほど録画された動画にて復習させていただければと思います。
  17. 私自身が知っていたことの中ではドローンによる土量などの測量ができることは知っておりましたが、姿勢制御を行い転倒回避することは初めて知りました。重機が転倒して崖下に落ちるといった事故は耳にすることがありますので、無人化の観点だけでなく有人でもぜひとも備わっていてほしい機能だと思いました。地形把握に関しても72時間のところが2時間に短縮されるというのは、災害復旧の初動に大きく影響されますので、ぜひとも発展・普及していただきたいと思いました。
  18. どのテーマも興味深く、そして説明が分かりやすかったです。
  19. 様々なフィールドで実用化が進む中で、土木技術の先端技術の革新に期待したいと思います。特に3次元地形モデルについて強く関心を持つことができました。
  20. ZMPの自動運転技術の内容に興味を持ちました。
  21. ロボットの姿勢制御や進行方向の障害物を3Dを組み合わせて認識させるお話は、普段何気なく移動している人間として見落としがちな視点だと思いました。建設機械などhe大幅に実用化が進んで来ていますが、今後さらにロボット技術の社会活動への応用が期待されます。
  22. 建設用ロボットに限らず、今後多種多様なロボットが開発されてくることと思いますが、その開発研究状況が聞けたので大変、勉強になりました。今は、コロナで世界中が困っている状況ですので、看護介護ロボットが早期に活躍できればと願います。ロボット開発状況に期待いたします。
  23. 千葉様 作業状態判別は重要案件であり、出口は多く想定されます。可能な公表等をよろしくお願いいたします。難しい場合、国交省への説明をお願いします。/事務局様 スライド資料等について、可能な範囲で提供いただけるとありがたいです。/事務局様 他の参加者がわかるとありがたいです。自分の表示名が確認できませんでした。/QAは後日掲示されるとありがたいです。/次は建設技術小委員会の海洋土木系のご担当との趣旨でしょうか。もしくは、災害調査等の水中ロボットでしょうか。次回も期待いたします。/
  24. 建設分野におけるロボティクス技術の適用に関して、研究開発の現状が網羅的に理解することができました。継続した当該分野のセミナーの開催を希望いたします。実装中事例の紹介も是非お願いします。
  25. 引続きよろしくお願いいたします。
  26. ICT技術の進歩が著しいと思っていましたが,更なる新技術の研究開発が行われていることを学習できました。

その他「貴重な講演ありがとうございました。」:20件